シトラス・セブンデイ




「……ナツ先輩、ちょっと、目のやり場に困る」

「ええっとごめん?!」


時計を見れば、12時45分ジャスト。平日昼間、私のお家にて。

私よりもずっと背の高い黒瀬くんが頬を赤くして私を見下ろしている─────はて、何故こんなことになったのか。

時を戻せば1時間前。

2限の体育をサボってカリンくんに保健室に連れられたわたしは、きくちゃんが彼女ができたことを聞いてしまって。カリンくんは気分が悪そうな私に気を遣ってくれたのか、ベットに寝かせて保健室を出て行ったのだった。

問題はそのあと。あろうことか昼休憩がはじまる4限終わりまで眠りについてしまったわたしは、『ナツ先輩、大丈夫ですか、』という慌てた声で目を覚ました。

眠い目をこすって状況を把握したところ、カリンくんに私のことを聞いた黒瀬くんは4限終わりに慌てて保健室まで走ってきてくれたんだとか。

正直、私の体調不良は寝不足が完全な原因だったので、2時間も寝てしまえばほぼほぼ回復していたんだけれど。

心配が募った黒瀬くんが私の担任まで直談判してくれたようで、そのまま黒瀬くんと早退することになったのだった─────。

というか、私だけならまだしも、黒瀬くんまで早退するって何? うちの学校は教師まで黒瀬王子に甘いのか?!


まあそんなこんなでうちまで送ってもらったのだけれど、ツイてない日というのはとことんツイてなく。帰り道に突然大雨が降って、致し方なく黒瀬くんをうちにあげたというわけだ。



「ごめんね、タオルこれでいい? 濡れちゃったよね……」

「いやそれより先輩が心配なので、風邪ひくと思いますし、シャワー浴びたほうがいいかなと……あっ、変な意味とかじゃなくて!あの!」

「だ、大丈夫わかってるから!!!」


私の家は母子家庭でお母さんしかいないので、働いてるお母さんが平日昼間にいるわけもなく。マンションの一室、わたしは黒瀬くんとふたりっきりになってしまった。


「うち男物とかなくて……黒瀬くんもシャワー浴びる? その間に制服わたし乾かしとくから」

「えっ、と」

「あ、わたし先にシャワー浴びてきたほうがいいかな?!」

「ちょっと待ってナツ先輩、俺もう帰りますから気にしないで」

「え?! でも外まだ土砂降りだよ?! 天気予報だとあと1時間でやむっていうし、お母さん夜まで帰ってこないから大丈夫だよ?」

「あと1時間……耐えれるかな……てか夜まで…それが問題なんだけど…」

「え、なに?!どういうこと?!」

「いや、ごめんなさい、こっちの話です」


心なしか顔を赤くした黒瀬くんがハッとして私をみて、「やっぱり体調心配だから先にシャワー浴びて身体あっためてください」と私をお風呂場に追いやった。