「ふうん……」
カリンくんは疑い深そうな目でわたしときくちゃんを交互に見やった。何かしら勘づいていたりして。
「じゃあ、菊池先輩も柚とナツ先輩のことは知ってるんですか?」
「柚って、黒瀬王子のことだよね? そりゃ噂回ってきてるから知ってる。まあ、まさかナツがあの黒瀬王子に告られるとは思ってもなかったけど……」
「それは、私も同感デス……」
「ま、ナツってこー見えて芯が強いとこあるから、そこに惹かれたのかもね。黒瀬の奴、意外と見る目あるね」
「ウワ……菊池先輩って天然タラシ?」
「わーーやめてやめてカリンくん!!!!ていうかきくちゃんには彼女いるし!!!」
「え?」
「あっ」
しまった、と口を手で覆った時にはもう遅い。だって、きくちゃんとマネージャーがキスしていたことを見てしまったこと、きくちゃんは知らないのだ。
「あ、えっーと、その……」
「うわー、もしかしてもう噂回ってた?」
「え、いや、」
「実はサッカー部のマネージャーと付き合うことになってさ、昨日の帰りだけど」
─────あ、やっぱり、そうなんだ。
昨日、実際にこの目で見てしまったけど。本人から直接聞くと、やっぱりダメージは大きい。
「そ、っか、おめでと、きくちゃん、よかったね」
なんとか絞り出した声に、笑う。これでもかっていうくらい、作り笑い。
でも、そんなこと、きくちゃんが気づくはずもなくて。
ありがとな、ナツ。そう言って、はんのり顔を赤らめて、きくちゃんは笑うのだった。



