シトラス・セブンデイ



「熱はないっすねー」

「ごめんカリンくん、授業サボらせて……」

「日常茶飯事だからヨユーですよっと、それよりナツぱいせんはほんとーに顔色悪いから早く寝た方がよさそーです」


黒瀬くんよりもきくちゃんよりも幾分か小柄なカリンくんは、私をベッドに寝かせて体温計で熱を測った後、ポカリを買ってきてくれた。

茶髪に片耳ピアスに前髪をピンで止めているところを見るあたり、かなーりチャラそうだなと思ったけれど、意外と優しいところもあるみたい。でも、それもそうか、黒瀬くんの友達だしね。


「……ありがとう」

「昨日あの後、柚となんかあったんすか?」

「え! いやいや、何もないよ、」

「そ? 柚、慌ててパイセンのこと追いかけて行ったけど」

「あー、うん、一緒には帰ったけど……」

「まじすか? ふうん……」

「え、何?」

「いや、オレ、柚とは小学校の時から一緒にいるけど、誰か1人にこんなに執着してるとことか見たことなくてー」


カリンくんがベットの横にパイプ椅子を持ってきて座る。そういえば、保健室の先生は今日はお休みらしい。怪我をした生徒のために部屋だけ開放してあるみたい。
カリンくんはよくここにサボりにきているようだ。


「てかさ、見ればわかると思うけど、柚ってすっげーモテるの」

「そ、そりゃわかるよ……芸能人みたいだし……」

「でしょ? それに、すっげーいい奴なの! まあ、女子には無駄な好意見せないように、超冷たいけど」


それも知ってる。だって、ルックス120点満点の黒瀬王子の唯一の欠点は、女子に信じられないほど冷酷なことだと言われているから。


「だから、ナツぱいせんが初めてなんすよ、あの柚が自分から追いかけてるなんて」

「で、でも、別に黒瀬くんも初恋ってわけじゃ……」

「んー、まあ何回か押しに負けて付き合ったりはしてましたけど、いつも柚が冷たすぎてすぐフラれてましたね、あれはおもろかったなー」


え。”何回か押しに負けて付き合った”?

予想外の返答だ。いや、確かにあの黒瀬くんに今まで彼女がいたことないだなんて、そんなことは有り得ないとは思うけど……。

他の女の子に対する態度を昨日見てしまったから、何人かと付き合ったことがあることに驚いてしまった。やだな、わたし、なんかもやもやしてる。なんなんだろう。


「てゆーか。ナツぱいせん、ほんとに今まで柚と面識なかったんですか?」

「え、ないよ、話したのも一昨日が初めてだし……」

「なのになーんで柚がこんなにゾッコンなんですか!」

「それは私が聞きたいんだけど……」

「ナツ?」



─────あ。

ガラッと突然保健室の扉が空いて、私の名前が呼ばれた。呼んだ主は、間違えるわけない、─────きくちゃんの声、だ。