「ちょっと、ナツ、ひどい顔してるけど大丈夫?」
「ひ、ひどい顔……タマキのバカ!」
「事実を述べたまでだけど」
「うう……」
黒瀬くんに告白とやらをされてから早3日目。2限の授業前、体育のために更衣室に向かう途中、廊下でタマキが水に濡らしたハンカチを私に手渡してきた。
たぶん、目が腫れているから、一回冷やしたら?ということだと思う。だって。
─────いろんなことがありすぎた。
昨日のことを思い返すと頭が痛くなってくる。黒瀬くんに告白されて、果梨くんにも懐かれて、挙げ句の果てに片思い相手であるきくちゃんがマネージャーとキスしているところを見てしまって。
黒瀬くんはそんな私の手を引いて、何も言わず、ただ家まで遠回りをして送ってくれた。
思い返せば、私、男の子と手を繋ぐなんて初めてのことだったのに。あまりにすんなり繋ぐから、わたしもすんなり受け入れてしまったし。
……ていうか、きくちゃん、マネージャーさんと付き合ったのかな。あー、もう、考えたくない。
「ナツ、体育大丈夫?」
「タマキが心配してくれるなんて珍しい……」
「心配ぐらいするわよ、あんたずーっとボーッとしてるんだから」
「うっ、だ、大丈夫大丈夫! 着替えよ!」
タマキは怪訝そうな顔をして、無理しないでね、と優しく言ってくれた。とりあえずのこと体操服に着替えて更衣室を出る。今日は外でサッカーだった気がする。
けど私の気分はずっと憂鬱。それもそうだよね、失恋したばっかりだし。黒瀬くんのことも考えなきゃいけないし。
あー、もう、考えすぎて頭痛くなってきた…
「ねえナツ、本当に大丈夫?」
「……実は昨日あんまり寝れなくて、」
「そんな顔してるよ、ほんっと馬鹿、もう、保健室いくよ?」
「いやいや授業をサボるなんて出来ないよ……」
「アレ、ナツぱいせん?」
ふと。グランドに向かう途中の廊下で聞き馴染みのある声がして振り向くと、そこには片耳ピアスの果梨くんが立っていた。なんてタイミングの悪い。
「あ、黒瀬王子とよく一緒にいる1年の子?」
「タマキ知ってるの?!」
「そりゃ知ってるわよ。黒瀬王子の次に人気のカリンくんでしょ。カワイーって先輩たちに大人気じゃないの」
「わー、よく知ってるねアリガトウゴザイマス! てかまあ、おれのこと知らないのなんてナツぱいせんぐらいだと思うけどネー」
ていうか、いつから”ナツぱいせん”呼びになったんだ。
「ちょーどよかった、カリンくん、この子のこと保健室まで連れてってあげてくれない?」
「えっ?! ちょっとタマキ!」
「私は特待生逃せないから授業サボれないの。じゃあねナツ、お昼までゆっくり寝てきな」
「ちょ……!」
なんて無慈悲なんだ、タマキの奴!(確かに、タマキは頭が良くて学費免除の特待生を狙ってはいるけれど!)
「ンート、よくわかんないけど、オレもちょうどサボろうと思ってたし、とりあえず保健室連れてきましょーか? ナツぱいせん」
こうして、体調がすぐれない私はお言葉に甘えてヘナヘナとカリンくんの後に着いて行ったのだった。



