◇
放課後、教室。
黒瀬くんと待ち合わせたのはいいものの、昨日と同じように人だかりができるのも困るので、下校する生徒と被らないよう時間をずらすことにした。待ち合わせの時間まではまだ少し時間がある。
ほとんど人がいなくなった教室の窓からグランドを見ると、サッカー部が練習前の準備体操をしているところが目に入った。
あ、いる。
きくちゃん。菊池康介。どこにいても、目についてしまう。これは、幼い頃からの癖みたいなもの。
「今日も楽しそうだなー、きくちゃん」
ふふ、と思わず笑みがこぼれてしまう。
仲のいいサッカー部員とじゃれ合う姿は年上とは思えない無邪気さだ。そこもいい。きくちゃんの笑顔を見ると、悩みとか、相談事とか、全部どうでも良く思えてしまう。何故かわからないけど、魔法みたいにきくちゃんに惹かれてしまう。
少女漫画で言えば、きくちゃんはヒーローで、私はきっと脇役。黒瀬くんが例外なだけで、私はどうしたって、誰かのヒロインになれるような見た目も性格もしていない。
だけど、こんな私でも、恋には落ちる。
何が好きかと聞かれると、よくわからない。物心ついた時からきくちゃんのことが憧れで、眩しくて、たぶんずっと、好きだったと思う。
スラッとした体型も、瞳がくりっとした人懐っこい笑顔も、人一倍努力家でずっとサッカーを続けているところも、誰からも好かれる少年のような性格も、昔から私を気にかけてくれるお兄ちゃん気質なところも、全部。言い出したらキリがないくらい、どうしてか、ずっと惹かれている。
こんなの、誰にだって、言えやしないけれど。



