「それより!」
「え、」
「いつもこんな甘い物ばっかり食べてたら体調崩すよ!野菜食べて!」
「それは……確かに」
茶色のおかずしか入っていないお弁当の私もどうかと思うけれど、男の子なのに菓子パンふたつの黒瀬くんも中々だ。どうりで細身なわけだ。スタイルはいいけれど。
「野菜ジュースあげるよ」
「いいんですか?」
「うん、栄養不足だもん」
「……ありがとうございます」
二限のあとに自販機で買ったから、もうぬるくなった野菜ジュース。飲み物は冷たいうちに飲む方が美味しい気がするけれど、まあ仕方ない。
少し汗をかいたそれを手渡すと、無表情の黒瀬くんの目元が少しだけゆるむ。あ、嬉しいんだなあってすぐにわかる。
ここにくるまではすごく緊張して憂鬱な気分だったけれど、黒瀬くんって案外かわいくて話しやすい。顔は整いすぎて、未だに正面からまじまじ見ることはできないけれど。
「ナツ先輩、」
「うん?」
「やっぱり好きです」
「エッ」
「……この野菜ジュース、勿体なくて飲めません、」
「何言ってるの、ただのジュースデショ……」
「でも、今後先輩から何か貰うことなんてあるかわからないし、俺のこと、心配してくれたのが嬉しくて……」
「わー!ヤメテヤメテ!そんな大それたことしてないんだから!今すぐ飲んで!腐る前に!」
「でも……」
「そんなの何本でもあげるしなんならお弁当だって作るし!」
「え!」
「え、」
「……本当ですか?」
さっきよりも大きく目を見開いて、きらきらとした視線で私を見つめる黒瀬くん。あれ、今わたしってばすごーくバカなことを言ってしまったような。
「ナツ先輩の手作りお弁当……」
「ウッ、」
いくら好きなわけじゃないとはいえ、こんな国宝級美少年に見つめられてお願いされたら断れるわけがない。なんだかうまく丸め込まれている気もするけれど。
「わ、わかった、明日から黒瀬くんの分も作るから……たいした物はつくれないけど、えーっと、それでいい?」
「どうしよう先輩、めちゃくちゃすきです、」
「だからヤメテ!今すぐ野菜ジュース飲んで!」
お弁当作りは全然苦じゃないんだけど、これから一週間黒瀬くんとランチタイムを過ごすと思うと……前途多難だ。神様仏様、わたしは全学年の女の子たちを敵に回していないでしょうか?一週間後、無事に生きているでしょうか?



