「……菊池先輩ですよね」
「あ、知ってたんだ、」
「好きなんですか?」
「エッ」
黒瀬くんってどうしてこうすべてストレートに物を言うんだろう。もうちょっとオブラートに包むとか、そういうことできないんだろうか。
「いや、好きというか、エーット、」
「……好きなんですね」
「ウッ、」
こういう場合、一体なんて返すのが適切なんだろう?
仮にも自分のことを好きだと言ってくれている人、しかも国宝級美青年の黒瀬くんに、自分の好きな人の話をするだなんて完全に人生を棒に振っている。間違いない。
「朝、楽しそうにしてましたね」
「うーんと、久しぶりに会ったから……」
「ナツ先輩、きっと知らないと思うけど、……菊池先輩のこと見るときだけ、唇をぎゅっと結ぶんです、」
「え、」
「あ、いや、こんなの言ったら気持ち悪いかもしれないですけど、」
「ウーン…」
「ナツ先輩のこと、ずっと見てたから、わかるんですよ」
お箸でつかんだウインナーを、思わず落としてしまいそうだった。危ない、こういう視線に慣れていなくて、黒瀬くんの言動ひとつひとつに動揺してしまう。
真っ直ぐに私を見据える黒瀬くん。きっとその気持ちに嘘なんてひとつもない。どうしてこんな、誰もが憧れる彼が私なんかを見ていたんだろう。……宇宙人にICチップでも埋め込まれたんだろうか。
「く、黒瀬くん」
「……はい」
「その話は一旦やめよう」
「え、でも、」
「きくちゃんのことは、好きというか、憧れというか、……家が近くて、所謂幼なじみで、昔から一番近くにいたから、特別なだけ……それだけだよ」
たどたどしく、まるで自分にそう言い聞かせてるみたい。バカだなあ、本当はずっと前から、きくちゃんの隣にいるときの胸の鼓動だけ、違った音をしているのに。



