黒瀬くんが手招いた先、ご丁寧に机を2つ並べて、私と向かい合うように椅子を配置してくれている。
わざわざお昼を食べるためだけにこんなところに来させてしまった挙句、学校イチの王子様にこんなことをさせていいんだろうか。そのうちバチでも当たりそう。
「あ、ありがとう…お邪魔します……」
お邪魔します、という言葉が適切かどうかは別として。
少しだけ照れたような表情をした黒瀬くんの手元には、お茶のペットボトルと菓子パンが2つ。甘いホイップメロンパンとチョコレートコロネ。意外だ、甘いものが好きなのかも。
「黒瀬くんって実は甘党なの?」
「実はというか、そうですね、甘い物が好きです」
「へえ、かわいいね」
「ナツ先輩は、いつもお弁当ですか?」
「うん、毎朝作るの大変だけどねー」
「え、手作りですか?」
「うんそうだよ」
手作りと言っても、昨日の残りを詰めることがほとんどだし、色合いも見栄えも気にしないから、今日も茶色一色だ。昨日の残りの蓮根とジャガイモ煮。朝焼いたウインナーと卵焼き、冷凍の肉団子。特に気合の入った物はないけれど、料理は基本嫌いじゃない。
「朝、いつもこのお弁当のために早起きしてるんですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……なんとなく、朝って好きなんだよね。あの澄んだ空気とか」
「わかります、」
「あれ、ていうか、私が早く登校してるの知ってたの?」
「僕も早起きわりと好きで……先輩のこと、よく見かけてたんです。今日も、」
あ、と思う。今朝、きくちゃんと一緒に登校していたのを見られていたんだろうか。別にやましいことがあるわけじゃないのに、なんだか恥ずかしくなってきた。



