シトラス・セブンデイ



入学してきた時から芸能人顔負けだと言われて話題になった黒瀬くんのことを知らない人なんてうちの学校ではいないだろう。それはもちろん、きくちゃんも例外ではなく。



「アレ本当なのか?」

「ウーン、私も夢じゃないかと疑っているところなんだけどネ……」

「ナツに色恋沙汰があること自体信じられないのに、あの黒瀬柚に告白されたなんて冗談かと思ったよ」

「もしかしたら罰ゲームの可能性もあるし……」

「それは少女漫画の読み過ぎ」


それを言われたら何も言えない。それに、噂を聞く限り黒瀬くんがそんなことをする人じゃないってわかってる。わかってるけど、さすがに1日ですべてを信じろというには無理がある。



「……きくちゃん、私が黒瀬くんと付き合ったらどう思う?」

「うーん、それは結構感慨深いなー。あの小さかったナツに彼氏が出来るなんて」



ですよね。

ガックリと肩を落とした私には気づかず、いつもと変わらない様子で隣を歩くきくちゃん。少しくらい寂しがってくれたっていいのに。きくちゃんにとって私の存在は本当に「小さな時からお世話していたひとつ下の幼なじみ」でしかないんだなあ。



「もう高校2年だよ、それくらい普通」

「俺の中ではナツはずっと小学生のままだよ」

「それ貶してる?」

「はは、ずっと可愛いって意味だろ」



なんとも思っていないからって、簡単にそういう言葉を言ってのける。

ふと並んで歩くきくちゃんを横目に見ると、その横顔の綺麗さに思わずドクリと心臓が鳴る。

黒瀬くんにはきっと及ばないけれど、……きくちゃんだって、本当に綺麗な顔をしていると思う。特に、この横顔のラインは正直誰よりカッコいい。それこそ、私と違ってきくちゃんは桁違いにモテると思う。

付き合った人数だってそれなりにいる。家が近いこともあって、きくちゃんの歴代彼女すべてと顔を合わせているけれど、私とは正反対のスラッとした美人系。私がきくちゃんの恋愛対象に入れる可能性は黒瀬王子に告白されることより低いみたい。