「ちょっと、何あれ、え、これ現実?」
「ザンネンながら、現実らしいデス……」
黒瀬くんが去った後、口を開けたままポカンとしていたタマキがやっと言葉を発した。それもそのはずだ、だって相手はあの黒瀬柚くんだもの。
「初めてあんなに近くで見たよ、黒瀬王子」
「それは、私も」
「……まじで芸能人? 肌綺麗すぎない? 男子なのに髪サラサラで二重ぱっちりで色は白くてスタイルは抜群で、え、芸能人?」
「芸能人ではないけど、芸能人みたいな見た目してるヨネ……」
「な、なんであんな国宝級のイケメンがナツを?! 幻?! 幻覚?! 夢?!」
「正直わたしも未だに信じられないよ……」
「いや、私はアンタがフツーに告白断ってることがいちばん信じられないわ!」
ふと周りを見ると、クラスメイトはさておき、これまた沢山の外野があちらこちらから集まってきている。私に聞こえる大きな声で、「黒瀬王子が告白ってマジ?!」「相手は?!」「え、あの子?」「ウソでしょ?」「いくらなんでもフツーすぎない?」と散々な言葉が飛び交う始末。
これ、少女漫画でよくあるやつ! ヒーローの取り巻きたちに逆恨みされて、体育館裏に呼び出し決定。もしかしなくても、わたしって明日からいじめられる!?
「ちょっと、顔に書いてあるわよ、いじめられるとでも思ってんの」
「ええ、タマキはなんでもわかるんだね……」
「ダイジョーブよ、黒瀬のファンはむしろ喜んでるわよ」
「喜んでる……?」
よく耳をすましてみると。
「あんな顔してる黒瀬くん初めて見た」「すきな人にはあんなに優しくなるんだ…」「ギャップってやつ?!」「こんな一面が見れるなんて最高……」「宇佐美さんに大感謝……」
なんて、意外にもやさしい声が挙がっている。黒瀬くんのファン、なんて質がいいんだ。



