「か、彼氏候補って……」
「一週間、俺、頑張ります。だから、返事は一週間後にしてもらえませんか」
「一週間で何をする気?!」
「……先輩と、仲良くなりたいんです。最初は友達でもいいです。……ダメですか」
しゅん、と肩を縮めて唇を噤んだ彼の瞳はまるで朝の湖みたいに透き通っている。こんな顔をされて断れる女子がこの世にいるだろうか。
「……一週間経ってもダメだったら?」
「そのときは、ちゃんと振ってください」
いつの間にかうちのクラスには信じられないほどの人だかりができている。それもそうだ、公開告白こそ珍しいのに、それがあの黒瀬王子なんだから無理もない。しかも、相手は無名の私だし。
「わかった、とりあえずわかったから、一旦自分のクラスに帰れるカナ?」
「え、いいんですか……!」
「うん、だから、とりあえず、」
「じゃあ、あの、お昼一緒に食べてもいいですか」
「ダメです」
「じゃあ、連絡先交換してください」
「無理です」
「きょ、今日の帰り一緒に帰っても──」
「わかった!わかったから!黒瀬くんとりあえず今日は自分のクラスに戻ろうか?!!」
いくらなんでも周りからの視線が痛すぎる! この黒瀬柚というオトコ、もしかしてこんなに完璧なルックスをしながら中身はド天然か?!
「やった……じゃあ、今日、帰り迎えに来ます」
「来なくていい!」
「じゃ、じゃあ下駄箱……」
「校門で! それじゃあね黒瀬くん!」
無理矢理彼の背中を押して、人だかりが出来ている廊下へと追い出すと、また頬と耳を赤くして「じゃあ、帰りに校門で」とこちらにぺこりと頭を下げてきた。礼儀正しい、おかしい、彼は女の子に氷のように冷たいはずなのに。



