シトラス・セブンデイ



「くくくくく黒瀬くん?!?!」

「マジか……黒瀬王子がここに……何かの夢……?」



軽く放心状態のタマキには目もくれず、座る私を真っ直ぐに見下ろす黒瀬くん。突然現れた学校のプリンスに、クラス中どころか廊下を歩いていた他の生徒たちも足を止めてうちの教室を覗き込んでいる始末。


ちょっと、正直勘弁して欲しい!



「ど、どうしてここに……?」

「今日、返事もらえなかったので、」

「いやそれは本当に心の底から申し訳ないと思ってるんだけど、でもだからと言ってこんなに堂々うちのクラスまでやってくるのはちょっと常識外れな気もするんですが?!?!」

「でも、先輩、朝の体育の授業で、俺のこと見てたから……」



慌てる私を軽くスルーして、そんなことを言ってのける黒瀬くんの頬と耳がみるみる赤く染まっていく。グランドにいた時もそうだった。どうやら彼は意外とすぐに感情が顔に出るタイプみたい。

いや、けれど今の状況でその事実は大分厄介なことになっている。なんたって学校イチの王子様だ、うちの学校の女子の半数は彼のファンだと言っても過言ではない。



「いやそれは、見てたというか、見ざるを得なかったといいますか……」

「目が合ったとき、びっくりして……。まさか先輩が、俺のこと見てる何て思わなかったから」

「それは私の台詞なんですけどネ……」

「あの、ごめんなさい、さっきの話聞いてしまいました。やっぱり俺じゃ、先輩の恋愛対象にはなれないですか?」

「いやいやいや、だって黒瀬くん、私たち会話したのも今日が初めてだし、お互いのこと何も知らないよね?!!」

「……先輩のそういうところも、好きです」

「や、ヤメテー!!! 頼むから皆の前で変なこと言わないで!」

「じゃあ、先輩の彼氏候補に、なってもいいですか」



周りの目が気になる私は、人生できっとこの先一度もないであろう国宝級のイケメンからアプローチを受けているというのに冷や汗がとまらない。きっとこの後、黒瀬くんのファンに絞め殺される。絶対そう。