シトラス・セブンデイ



「あのねえ! あの黒瀬王子に告白されること自体前代未聞なのに、それを無視して逃げてくるなんて地球がひっくり返ってもあり得ないよ?!」

「ウッ、それは百も承知です……」

「あの黒瀬柚と付き合いたい女子がこの世に何万人いると思ってんのよ!」


ウッ、ただの男子高生のはずなのに、万単位で彼女候補がいるとは恐ろしい。世の中顔がよければなんでもいいのか!


「で、でもさ、確かに顔がいいのはわかってるんだけど、私黒瀬くんのこと何も知らないし」

「国宝級の顔面に何を贅沢言ってる?!?!」

「す、スイマセン……」


でも、だって。

誰だって恋愛に対して憧れというものがあるものだ。

私の場合は主に少女漫画の主人公。家が隣同士の幼馴染焦れ甘ラブや、隣の席の意地悪な彼に不本意に落ちてしまう近距離恋愛、はたまた誰にでも優しい王子様の裏の顔を知ってしまって始まるハプニングラブストーリー。

どれをとっても女の子の憧れとキュンが積め合わさって、焦らされながら、すれ違いながら、段々と運命のふたりは恋に落ちていくものなのだ。


ところがどうだ、今回のシチュエーションは「突然」にも程がある!


学校イチの王子様に告白されました──それだけ聞けば十分恋愛漫画にも恋愛小説にもなり得るかもしれないけれど、根本的に私と黒瀬くんには接点がなさすぎる。会話をしたのだって今日が初めて。そもそも存在を知られているだなんて夢にも思わなかった。学年もひとつ下だし。



「……黒瀬くんは確かにかっこいいけど、やっぱり恋愛対象かって聞かれると、そうじゃないんだよね……」


不満をこぼすタマキに渋々そう告げながら顔を上げると、元々パッチリしている瞳をさらに大きく見開いて私の後ろを見ていた。

え、何事?

タマキの視線の方向へと振り返る──先には無表情の黒瀬くんが立っていた。