こんなに綺麗な世界を順が持っているなんて知らなかった。


静かに感動していると、順が「これは、アラスカ。これがチェコ」と順番に説明していく。


中には日本の風景もあった。


「……すごい」


感想を漏らすと「たいしたことないよ」と順は苦笑した。


「まだまだ、だし。俺レベルの人は世界にごまんといるしね。今までやってこれたのがラッキーだったくらいだよ」


夢を半ばで諦めていく人を何度も見てきた。


だからこそ、真剣に夢に取り組みたい。


そんな風に言われたような気がして、せりは静かに頷く。


「でも、すごいと思う。私にはできない」


正直に感想を伝えると、柔らかい笑みを浮かべて「そんなこと言ってくれるの、せりさんだけだよ」と言った。


「コーヒーかなんか飲む?」


尋ねられるが、正直会えた興奮と感動でそれどころではなかった。


「大丈夫です」



「そっか……」


「……」


「……」



せりは順が話をするのを待っていた。


何か言おうとしている。


そんな気がした。