オフィスビルの上で、中田順のスマートフォンが着信を告げる。
「はい」
素っ気なく電話に出ると「釣れない返事ね〜。せりちゃんのこと教えてあげないわよ〜」と不貞腐れた声色の男の声がした。
「幸平さん、どうしたんですか?」
「あの子と会ってる?」
「いいえ、誰かさんとのコラボのおかげで返信すら来ませんよ」
LINEを開いて、最後に送ったメッセージを確認する。
既読はついているものの、返信はない。
見てくれているということだが、一向にない返信にドキマギしている自分がいた。
「嫌われてるんじゃないの?」
ケラケラ笑う三山に、順は軽く舌打ちする。
本当に腹立たしいオカマだ。
キャラ作っているだけだと週刊誌にリークしてやろうか。
本気で思う。
「で、要件は何?」
「ああ、芽生ちゃんとは接触できた?」
「できましたよ。買い物まで付き合わされましたしね」
「上出来、上出来」
「あの役目、別に俺でなくても良くなかったですか?」
「ダメよ〜あの子はあなたがお気に入りなんだから」
順はタバコに火を点けて、大きなため息をついた。
「俺は、せりさんとデートがしたい……」
「まあ、あの子。今迷走中だからね〜。ミーティングでも発言が微妙なのよね。自信がないのかしら」
「誰かがいじめたんじゃないですか?」
皮肉っぽく順は言った。
彼自身も連絡はマメな方ではないが、ここまで日にちが空いてしまうと非常に気になった。
約束していた木曜日も用事があるといって、会った次の日にキャンセルされてしまったのである。
何がいけないのか分からなかった。
「あら、失礼ね。面白い子を伸ばそうとして何が悪いのよ。あんなしがない店長のポジションじゃもったいないわ。あの子の作った店を見たことある?生き物みたいに空間が人を呼び寄せるのよ」
そんな順の心境を知ることなく、三山は恍惚とした声色で言葉を続ける。
「どういう状況ですか?」
タバコを手で弄びながら、順は笑った。
「とにかく、あの子の才能を伸ばしたいと思ったのよ。まあ、あなたと付き合おうが付き合わなかろうが、伸びて欲しいことには変わりはないわ」
「わかりましたよ。協力させていただきます」
「にしても、連絡ないのはちょっと心配よね〜」
話題を少し前に戻し、三山は口調だけは心配そうな声を出す。
「……」
「冗談よ、順ちゃん〜。明日も会うから聞いておいてあげるわね〜」
嫌なオカマだと思うが、毎日会っているのは三山だ。
変なことを吹き込まれては困ると、順は何も言わなかった。
電話を切った後、もう一本タバコに火を点けると、今度は違う人物から電話がかかってくる。
まだまだせりには会えそうにない。



