呆れるほど恋してる。


順が深いため息をつく。


「せりさん」


だだをこねても仕方ないよと言わんばかりの態度をとる順だが、気を使ってタクシーで帰ると言っているんだからそのまま帰らせてくれてもいいのではないかと思う。


「……今日はありがとうございました」


頭を下げて、タクシー乗り場まで行こうとした瞬間、強く腕を引っ張られ抱きしめられた。


「それ、俺のことをいじめてるの?」


「……いじめてなんか」


「会いたかったよ」


囁かれる。


ダメ。


そんな風に囁かないで。


頭の中で言葉を反芻させるが、順に届くわけもない。


「そうやって、遊んでるんですね」


「遊んでないよ」


「……嘘」


「連絡先教えてくれないで帰っちゃったのはせりさんでしょ」


「仕事、遅刻だったし……」


「そうなの?」


抱きしめられる力が強くなる。


「……結局遅刻しちゃったけど」


「気づかなくて、ごめん」


謝罪されて更に罪悪感が募る。


「私も、この間きついこと言ってごめんなさい」


「気にしてないですよ」


顔だけ順の方に向けられて、キスをする。


夜中と言えども駅周辺だ。


人が行き交う中でキスをするのが、この男は好きなのだろうか。


「あの……」


「ごめん。止まらない……」


「でも……んっ」


「せりさん、かわいい」


楽しそうに順が笑う。


「笑わないでください」


不貞腐れたように言うせりに、順は「やっぱり送らせて」と笑いながら言った。