その後、気がついた時には終電がなくなっていた。
最近こういうことばかりだ。
今までの社会人生活で、ここまで終電を忘れたことはない。
「タクシー代出してあげる〜。それか、順、あんた車で送ってあげなさいよ〜」
完全に出来上がった三山が友香と肩を組みながら、順に言った。
「幸平さんは帰れるの?」
「私は大丈夫よ〜。ここから二十分だもの」
三山幸平の自宅は恵比寿にあるのか。
行くことはないだろうが、美容オタクの情報収集の癖がせりの脳にインプットさせる。
「友香さんは乗ってく?」
「大丈夫。ここから、事務所に行って仮眠取ってから朝の撮影行くから」
「そっか。ハードだね」
先輩、またね。
という言葉を残して、友香は去っていく。
モデルという職業も、時間的拘束がない分、不規則で厳しい世界なんだというのがこういう時に垣間見える。
「私はタクシーで帰るわ。せりちゃんは順に送ってもらいなさいよ〜」
酔っ払いの三山はわざとらしいウインクをして、タクシー乗り場まで走って行った。
「ったく。あのおっさんは……」
順がため息をつく。
「……あの。私もタクシーで帰ります」
気まずい。
前回、毒を吐いてその場に置き去りにしたにも関わらず、都合のいい時だけ順を使うような女になりたくなかった。
それに、もう二度と会うこともないと思っていたのだ。
これ以上一緒にいたら間が持たない。
「いや、乗っていっていいですよ。今日は飲んでないし」
前回のことを忘れたかのように、あっけらかんと順は言った。
「いや、多分家遠いですし」
「いや、別に大丈夫だよ」
「いや、大丈夫です」
「……」
「……」
頑なに断ったら、気まづい沈黙が二人の間に流れた。



