「咲ちゃん、ごちそうさま」
「あっありがとうございました~」
私が吉村君に学生手帳を持っていってから2週間がたった。
もちろん彼には一度も会っていない。
ま、会うつもりもないけどね。
カランカラン~
「いらっしゃい…」
私はドアに振り向いて入ってきたお客さんと目が合い一瞬固まってしまった。
「吉村君…」
そう。そこにいたのは2週間前にあった吉村君と月羽君とその友達がいた。
「蒼、この女と知り合いなの?」
吉村君の横にいた女の子が首をかしげながら言った。
ズキ…
その子を見て何故か胸が痛くなった。
「いらっしゃいませ~お好きな席へどうぞ」
私は無理やり笑顔をつくりキッチンへと逃げていった。
後ろから月羽君の声がした気が気にしなかった。

「咲ちゃん、もう上がっていいわよ。お疲れ様」
「あっお疲れ様です」
いつの間にか5時を過ぎていた。
吉村君達が座っていた席を見てみるとそこには誰も座っていなかった。
いるわけないよね…。
来て2時間もたってるんだから。
ガチャ
私は着替えを済ませ裏口から出て帰ろうとすると…
「おい」
目の前には吉村君が立っていた。
「えっ…なんで?」
「こないだのお礼してないから」
そうぶっきらぼうに渡してきたのは浜風水族館のチケットだった。
浜風水族館は最近出来たこの辺では一番大きい水族館だ。
「学校のやつがくれただけだから!友達もいるけど良かったら行かね?」
吉村君はすっごい顔お赤くして言った。
なんだかそんな吉村君が可愛く思えてしまった。
こんなこと言ったら怒られるだろうな…
「私もいいの?」
「あぁ。今週の土曜日10時に霞ヶ丘駅に集合だから」
そういうとじゃと言って吉村君は帰って行ってしまった。

蒼side
「あれ?」
女が桜岡高校に来てから10日がたったある日月羽があるカフェを指さした。
月羽が指さしている先を見てみるとSakiと書いてあるカフェで働く女の姿があった。
「あの子がこないだ持ってきてくれた子?」
「あっ…あぁ」
そう答えると音羽はにやりと笑った。
「なんだよ…」
「お礼!まだあの子にしてないよね?」
「あぁ…ってまさか…」
「当たり前でしょ!拾ってもらって何もお礼しないなんてありえないから。それに女の子ってこういうの嬉しいもんよ」
まじかよ…。
お礼って言われてもそんなことしてきたことねーしどうすればいいんだ?
今まであいつみたいに何かを落としたから拾ってきてくれるやつなんていなかった…いや、拾っても俺だと分かれば誰も持ってこないだろう。
俺は桜岡高校一喧嘩強いと言われている。自分ではそんなつもりねーけど月羽に言わせると一番強いらしい。
「なぁ…。5人で水族館行かね?」
「はぁ!?」
月羽と音羽と凌平の3人は驚きを隠せずにいる。
「「えっ?どうした蒼…」」
「頭ぶつけたか?病院行こう!」
月羽と音羽に限っては同じことを同時に言ってるし…。
さすが双子だ。
「いやいや…驚きすぎだろ。そんなびっくりすることか??」
「「「当たり前だ!」」」
今度は3人ともが声を揃えた。
「今まで俺達が出かけようって言っても言ったことねーやつが急にどーした!?しかも…女の子入れて5人だなんて…今までのお前からすると考えられん」
あれ…そーだっけ?
俺的には遊んでるつもりだけどな…
凌平に言われて俺はみんなとそんなに遊んでないことを知った。
「蒼…もしかして女の子に惚れたとか!」
「「「はぁぁぁぁ!?」」」
音羽が言ったことに対して今度は男3人の声が揃った。
惚れた!?
この俺が名も知らない女を?
いやいや…ありえねーだろ。