落し物
ミーンミーン
セミが鳴り止まない7月
私、藤崎咲穂はバイトを終えて帰ろうとしていた。
「暑っ…」
夕方とは言え今日もとても暑い。
あれ?
いつもと変わらないバイト帰りの道になにやら手帳のようなものが落ちていた。落し物かと思い拾うと長方形の形をした薄い紙が落ちた。
その長方形の紙を見ると桜岡高校吉村蒼と書いてあった。
これ、学生手帳か…。
桜岡高校は私の家から徒歩10分ぐらいで行ける所にある有名な不良高校だ。去年から共学に変わり女子は全体の2割ほどしかいないと聞いたことがある。
いつもなら落し物を見つけても警察に届けるが今日はなぜか持っていかなければならない気がして私は桜岡高校に向かった。

うわ…
桜岡高校の前にはたくさんの不良がいて学校に近づくには勇気がいった。
バチッ
高校前にいる不良たちを見ていたら一人の男の子と目が合ってしまい男の子がこちらに近づいてきた。
「なんか俺達に用?」
近づいてきた男の子は頭は金髪で耳にはピアスをしていてとても怖そうだがそうでもなかった。
「何だ何だ。この女月羽の女か??」
へぇーこの人月羽って言うんだ。
月羽って言う男の子の友達がやってきてジロジロ私のことを見てきた。
キモ
「おい…そんな…」
「吉村蒼君って言う男の子に会いたいんですけど知ってますか?」
月羽君が男友達に話しかけるのを遮るかのように私は笑顔で言った。
「蒼に用があるのか?ちょっと待てよ」
私が言うと月羽君がどこかへ行ってしまった。
知り合いなんだ…。
月羽君がどこかへ行ってしまったと同時にほかの不良男子からたくさんの質問をされた。
彼氏はいるの?とかどこの高校生?とか蒼とどういう関係?とか…正直うざい。
「ほら!どいてどいて。蒼、この子があんたに用があるんだって」
月羽君が連れてきたのは茶髪でピアスをしている不良男子だった。
「なにか用?」
「これ、あなたの学生手帳よね?」
吉村君は私がカバンから取り出した学生手帳を受け取り中身を見て
「わざわざ持ってこなくてもいいのに。こんなもんいらねぇし。それにこんなもんのためにわざわざここまで来るとか馬鹿じゃねーの」
と言った。
「あなたは高校に通えてるんだからいいじゃない。親の都合で高校に通え「わざわざ持ってこなくてもいいのに。こんなもんいらねぇし。それにこんなもんのためにわざわざここまで来るとか馬鹿じゃねーの」
と言った。
「あなたは高校に行けてるんだからいいじゃない。親の都合で高校に通えない子だっているんだし、こういうの持って歩くのも高校までなんだから大切にした方がいいと思うけど?」
そういうと私は来た道を戻りった。
これが彼との出会いだった

蒼side
「おーい蒼。お前に会いに来てる女がいるぞ」
校門前で友達と話してたらさっきまでどこかへ行っていた月羽が俺を呼んだ。月羽とは中学からの付き合いでこいつの双子の妹である音羽とも知り合いた。
「女?めんどくせーから帰らして」
俺は女が好きではない。香水くせえし化粧もケバいし。
「いーから会うだけ会えって!」
俺が断ると月羽は無理やり俺を立たせて女の前に連れてきた。
「なんか用?」
俺が冷たく言ってもその女は顔色一つ変えず俺に学生手帳を渡してきた。
「わざわざ持ってこなくてもいいのに。こんなもんいらねぇし。それにこんなもんのためにわざわざここまで来るとか馬鹿じゃねーの」
俺がこういうと大体の女は泣き出してしまうがこの女は違うかった。女は顔色や表情を何一つ変えずに
「あなたは高校に行けてるんだからいいじゃない。親の都合で高校に通えない子だっているんだし、こういうの持って歩くのも高校までなんだから大切にした方がいいと思うけど?」
と言ってどこかへ行ってしまった。
なんだあの女…。
一瞬あの女の表情が暗くなった気がするが気のせいか。
女が帰っていくと俺はダチに「どういう関係なんだよー」と質問された。
この時はまだ、ただ落し物を拾って届けてくれた女としか思っていなかったしあんなにお前のことが忘れられなくなるなんて思いもしていなかった。
これがあいつとの出会いだった。