「俺、あなたが好きなんです」



そう言われた私は、ぽかんと惚けた。




ざっとその言葉に合わせるように、春の風が吹く。


ちょっと強かった。



全面桜色の視界に入るのは、私たちの通う高校の男子制服。





「えっと」



多分、何を言ったって本質は変わらない。



「た、例えばどこが?」



そんな稚拙な質問でしか返せない私を恨んだ。


言ってから後悔しても遅く、その言葉は頭の中を反芻した。



「えっと…」


けれども彼は、ちょっと困りながらも答えてくれそうだった。



「性格…かな?」



少し照れ気味にそう言った彼は、私より可愛らしい。




「ありがとう。」



心からの言葉。



「けど、その言葉は撤回した方がいいかもよ」



「え?」




「私、好きになったらその人のこと、なんでも知りたくなるタイプだから。」



そのせいもあってか、今まで付き合ってきた人たちといえば私に怯えるようになった。




「受けて立つよ、それ。」



「ええ?」

私はちょっぴり苦笑。




聞いてなかったのか、と一瞬思ったけど、聞いてなかったらそう答えない。




「俺と勝負しよ。

互いを知れるとこまで知って、音をあげた方が負け。」




どうですか?と同級生ながらに微妙な敬語を話す彼は、きっと私よりも壊れてる。




「いいね、それ。面白そう」




私も彼も、にっこり、他人行儀な笑みを浮かべる。




「じゃあよろしくね。自己紹介しないと。

私は縁遠恋重(えんどおこいし)」




「俺は、近内因(こんないちなみ)、よろしくね」




私たちの調べ合いを、調べ愛を始めよう。