「…じゃあな。」
「うん…ばいばい。」
結局、マンションに着くまでも、エレベーターの中でも、4階の通路を歩いていても
会話をすることはなかった。
優くんは、3号室の前で一旦止まって別れのあいさつをしてくれたけど、顔はずっと前を向いたままで
私の返事を聞いて、1号室へと向かって歩いて行く。
そしてそのまま、優くんは一度も振り返ることなく、自分の部屋へと入ってしまった。
涙でぐっしょりした顔を見られずに済んだことに、ホッとする反面
どこかで、いつか微笑みかけてくれるんじゃないか、普通に話してくれるんじゃないかと
期待をしていた。
「……う…っ…うぅっ…。」
涙が溢れて止まらない。
すぐ近くにいたのに、優くんはとても遠くて
なぜだか分からないけれど
優くんが
どこか遠くに
行ってしまう気がした。

