私に気づいた優くんがかけてくれた声が、私の世界を切り開くように、私の耳に届く。
熱で倒れていた時と違い、少し低めの声はかすれることもなく、落ち着いていて、心地がいい。
優くんとずっと目が合った状態のまま、私は教室の扉をパタンと閉めた。
「ゆ、優くん。・・・お待たせ…しちゃって、ごめんね。」
私は、しどろもどろになりながら、優くんと目を合わせた状態のまま返事をした。
「いや、こっちこそ、急にごめんな。」
頭をかきながら、困ったような表情でそう言う優くん。
なんだろう…この何とも言えない、重たい空気。
別に優くんは、何か不機嫌なオーラを出しているわけでもない。
だけど、この教室だけが
他の教室からは隔離されてしまったかのような、取り残されたような、そんな雰囲気を漂わせている。
「そんなことないよっ!何も、予定なかったし!」
自分の中の変な胸騒ぎを隠したくて、優くんと私を包む空間を少しでも明るくしたくて
手を振り、慌てて答えた私。
それでも、何か変化が起きたわけでもなく、優くんの表情が穏やかになるわけではなかった。
空中で行き場を無くした手を、どうしていいか分からず
とりあえず私は、早歩きで優くんが座っている席の、斜め前の席に腰掛ける。

