今日着ている木苺で染めた赤いスカートも、赤いカチューシャも、たった1度だけ六花が似合ってると言ってくれたものだった。
それ以来気に入って赤いものを増やして苦笑されたけど、嫌だとは決して言わなかった。




すぐにブスだの似合わないだのと侮辱してくる六花にしては珍しかったから本当に嬉しくて、森の小鳥たちに自慢した。
鈴の音で返す彼らに六花の優しさなんてきっと伝わっていないけれど、それでも構わない。





あたしは六花のために生きるんだから!





「ねぇ、お城にはどうやって行けば良いのかしら?」
「え?」
「道に迷ってしまったみたいなの。もしかしてここは通らないところだった?」




林檎がたくさん入った籠を抱えた少女がいきなりあたしに声をかけたからびっくりして振り向いた。
少女が着ていたそれは見たこともない鮮やかな色使いの服で、麓の街で人気(らしい)のブランドのものだった。



プラチナのストレートヘアが可愛くて、くりくりおめめのお人形みたいな綺麗な少女。
歳はあたしよりも下に見受けられる。
少女に働き口があるのならあたしにも……!





「お城なら、その道を抜ければすぐよ」
「ありがとう。えっと……」
「林檎、白雪林檎よ」
「そう、ありがとう、林檎さん」




籠から林檎をひとつあたしに手渡してお城の方向に去って行った少女。
揺れる瞳が何かを訴えているように見えたけれど、いかにも毒りんごです、っていうような禍々しい林檎を捨てながら、少女の無事を祈る。
最近は山賊も多いと聞くから、少女が無事にお城に辿り着けますように、と。




自分の美しさが1番でないとダメなお妃様のお城に何の用があるのかはわからないけれど、少女の目的地であるあの城は随分と変わってしまったように見えた。




昼でも暗く、負の色のするお城。
あんなところに今まで住んでいたのだと思うと、六花と2人の森での暮らしがどれだけ幸せなものであるか改めて解る。
やはりあたしにはこの森しかないのだろう。