どうせ結婚するのなら、誰の命令でもなく、自分の意思で相手を選びたい。
身分なんて関係なく、好きになった素敵な女と幸せになりたい。



ずっとずっとそう思ってきた。



だからーーーーーーーー



「悪いことは言わねぇよ。そこらの豚の相手をするくらいなら、俺の虜になれば良いんじゃねえの。べ、別にお前のことが好きなんじゃねぇからなっ、勘違いすんじゃねぇぞ!」
「照れなくてもあたしの旦那は……王は貴方よ、六花」




俺のココロいっぱいに住み着いた林檎は、身分差を乗り越えて俺を求めてくれた。
告げたのは林檎からで、俺はそれにキスで応えた。
彼女を好きになって本当に良かったと思う。




俺をまっすぐに見据えるその瞳も。
俺を抱きしめるその腕の温度も。
彼女がくれるものは全て、俺を想ってくれた結果だった。



「お前は何も心配しねぇでのほほんと生きてりゃ良いの。お前のことは俺がま、まもってやっても良いんだぜ。お前より背は低いけど一応男だしな。お前はそこで笑ってろ、な?」




ツンデレな俺に、毒を吐きつつも付いてきてくれる姿勢も。
甘く美しいソプラノも、麗しい見目も。
俺を惑わせて狼狽えさせる。
態度とセリフがまるで噛み合わなくなるのに、彼女は俺が言葉にするのを待っててくれる。



「荊棘の森のお姫様、素敵な物語だろ」
「そうね、茨姫みたい」
「おおお俺は、お前を呪いの眠りにつかせるつもりはねぇかんな!」
「何どもってんの、ちゃんと話なさいよ馬鹿」



荊棘のアーチが出迎える、小さな森の小さな家での暮らし。
ゆったりと流れる時間と宵の月がとても綺麗なあの森で。
毒を吐いて笑う彼女が、欲しいと思った。



だからゆったりとしたあの森で、彼女と結婚式を挙げるのが夢だった。
突然に叶ってしまったその夢に、現実なのかと疑うこともあったけど。



「林檎、好きだ。愛してる」
「あたしも、好きだよ」





どうか彼女と、永遠の愛を。
どうか彼女を、永遠に護り通せますように。



牧師の声が森に響く12月。
俺と林檎の住んでいたあの森は、俺らの出発を祝うように雪が降っていた。



「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、互いを愛し、互いを敬い、互いを慰め、互いを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」



牧師の声に、2人の声が重なる。





「「はい、誓いますっっ!」」






【完】