月光が綺麗に反射してキラキラと光る、ベランダ。
赤のドレスが、見えた。
あぁ、林檎だ。愛しい林檎だ。




赤いドレスと、いつも森で見ていた赤のカチューシャ。
黒髪の短髪が麗しく戦ぎ、まるで妖精のように舞い遊ぶ。
一週間ぶりに見た林檎はダンスパーティーの会場の誰よりも美しかった。





「月夜見六花様、本日はお越し頂きありがとうございます。中々素直になれないあたしをいっぱいいっぱい支えてくれて、ありがとう」




曲が止まって、ベランダから響いた鈴の音は高く甘い。
あぁ、そんな声で俺を呼ぶな。
我儘にお前を求めてしまうではないか。





「あのね六花。あたしずっと言いたかったことがあるの」
「……何だよ」
「誰にも言ってないことよ。六花にだけ、伝えたいこと」




ベランダの手摺りから身を乗り出すように手を伸ばす林檎。
それは一枚の絵画のよう。
俺を手摺りの近くまで呼び寄せると、ベランダの柵を越えようとする。
何をする気だと身構えた時、林檎が微笑んだ。





森で会った時に見た、遠慮するそれではなく、心からの幸せそうで儚いそれは俺をそこに縛り付ける。
無意識に伸ばした手に、風が触れる。
林檎がベランダから俺の胸に飛び込んできたのだ。





「王室に、貴方を歓迎します。大好きなあたしの六花」




濡れた唇が掠めたその温度を、俺はきっと一生忘れることはないだろう。