お妃様とも仲直りしたようだし、お姫様は家に帰る時間だと、林檎の軽く背を押す。
吃驚の表情で振り返る林檎に手を伸ばしかけて、その手を引っ込める。



俺みたいな身分の低い男が何をしてるんだ。
俺よりも相応しい男は五万といるじゃねぇか。




それでも、解っていても、林檎が欲しい。
この世でただ一人、愛した人だから。
普段は中々素直になれずにツンデレな態度を取ってしまっている自覚はある。
けれど、本当に想っているんだ、護りたいんだ。






「幸せになれよ、林檎様」
「六花……」
「お幸せに」




これで、良かったんだ。
良かったのに、なんで涙が溢れて止まらねぇんだ。




俺を呼び止める声が聞こえたけど、振り向いたら俺が俺でなくなってしまいそうだった。
走り出した俺を止めようとして林檎が転んだ音がした。
それでも足を止めることは出来なかった。
さよなら、幸せになれよ、林檎。
そう願って、城を出た。