林檎が魔法の鏡にかかった布を取り払う。
縁に宝石の彩られたいかにもな鏡が顔を出す。
これが魔法の鏡……お妃様を惑わせた魔法の道具……。





「答えなさい、この国で一番美しいのはお妃様よね?」
「はい」





ほら、ごらんなさい。
嬉しそうに微笑う林檎と、ほっとしたように膝を付くお妃様。




そのお妃様を支えるようにして立たせる警備隊長。
その手つきは触れたくて触れられなかったガラスに触れた人のようで、その愛の深さが解る。
狂ってしまった愛し人を元に戻したくて、でもやり方が解らなくて、きっと辛かったことだろう。




「林檎、今までごめんなさい。貴女の言う通り、美しさは見目だけじゃ決まらないわよね」
「えぇ。あたしは愛にも美しさはあると思うわ。そうよね、警備隊長?」
「……バレてましたか」
「昔から、ね」




必ず幸せにしてくださいね、と警備隊長の背を押す林檎。
自分を殺そとしたお妃様の幸せを願える林檎は本当に美しい。




解るか、お妃様。
美しさとはこういうことを指すんだよ。