「お妃様、貴女から見てあたしは美しいですか」
「……えぇ、悔しいけれど。貴女がいると私は幸せになれない」




綺麗じゃないと幸せになれないなんて思い過ごしだろう?
知らないふりで通してきたんだろうけど、お妃様を想う男だっている筈だ。




「お妃様、人は一方向からの美しさだけではありません。内面、性格、見目……美しさを計る定規は沢山あるのですよ」
「……っ、」
「本当は解っているのでしょう?貴女が鏡に認められないのは、あたしを呪ってやるって思ってるから。民を愛せぬお妃様には1番はあげられません」




お国の為に、と刀を向ける林檎が儚くて痛々しくて。
そっと抱きしめれば強い力で跳ね飛ばされる。
何すんだよ、せっかく素直になろうとしたのに。




大丈夫ですか、護ってくださいますか、と心配の声を俺の耳元で紡ぐのは警備隊長。
彼の視界いっぱいに映っているのはお妃様。
ほら、アンタのことを想う男、いるじゃねぇか。





「林檎様、おやめ下さいっっ!」





警備隊長が林檎とお妃様の間に割って入る。
元々刺すつもりなんて無かったのだろう、林檎が刀をゆっくりと下ろす。




お妃様はずっと愛されたかったのだろう。
だけど愛されるための方法を間違えてしまった。
本当は心根の優しい、良い人なのだろう。