いつだったか林檎が言っていた。
「一方向から見た情報だけでなく、多方向から見た情報が大事。人は見目だけじゃ決められないのよ」
極論だとは思ったが、その考え方は俺も同意出来た。




お姫様はもっと見目や身分を重要視するものだと偏見を持っていたから、林檎の考え方がすごく新鮮で美しく映った。
素敵なお姫様だと思った。
国民に愛されるお姫様だと。




だけど少しメンタルが弱い。
無条件に愛されてきた林檎は、嫌われることに慣れていない。
お妃様が狂った時、きっと林檎はどうして良いか解らなくて、周りも見えずに逃げ出してきたのだ。






お妃様の心を救うことも考えず、ただただ自分の保身の為だけに。
自分が他人を救えることを、林檎は知らないで生きてきた。
もう少し世間を学ばないと、林檎はすぐに朽ち果ててしまうだろう。




だから森に逃げてきた林檎を、家に閉じ込めて知識を与えようとした。
街で雑誌を買ってきては読ませ、ろくに使い方も教えずにものを与えた。
幸い文字は読めるようだったから、自分から学ぶ姿勢を学ばせるためにも、俺が教えることはしなかった。





林檎が寂しい思いをしているのは知っていた。
だが外に出せば、お妃様に狙われる危険が増える。
危険なことだっていっぱいあるのだ。
林檎を傷付けるような世界なんて見せたくなかった。