ずっと、お妃様に言いたいことがあった。
まぁ林檎に出会う前に一度だけ見たお妃様は綺麗で、その娘である林檎も綺麗なのだろうと思った。



けど綺麗で儚かった。
触れたら脆く崩れてしまいそうで、すごく心配になった。




その数年後、林檎の誕生日のダンスパーティーがあって、ちらっと顔を出した。
別に林檎と顔見知りだったわけでもないし、お誕生日おめでとうが言えればそれでと思った。




会場の真ん中で一際目立つ彼女は誰に手を取られることなく独りで舞っていた。
蝶が乱舞するようで、とても可憐で。
お妃様とは違った綺麗さがあった。



ダンスパーティーのあと、林檎がうちにやって来た。
本当は林檎があの城のお姫様なのは知っていたし、林檎を差し出せば俺は普通の生活を送れることも解っていた。




解っていたのに、怪我した足を隠し強がる林檎を見て、護らなければと思った。




思えばあの誕生日のダンスパーティーでの一目惚れだったのだろう。
パートナーがいないなら、俺が姫様のパートナーになりたい。
流石に烏滸がましくて口には出来なかったけれど、それは今も変わらぬ想いだ。




なぁ、お妃様。
本当は気付いているのだろう?
美しさは見目だけで決まるものではないと。