パンを並べるだけ、と聞いていたのに、袋詰めやレジ打ちなど、他の仕事もすぐに任せてくれるようになった。
この調子なら、すぐに六花を助けられるかも、って考えてその考えに首を振る。




そもそもなんで働きに出てきたのかが解らないから、いつ帰れるのかすごく不安だった。
薬売りの表情から六花には高い薬が必要なんだとは容易に想像出来たけど、いくらなんだろうか。
1週間働いたお金で手に入るわけないだろうし。





「頑張っていますね」
「薬売りじゃない。ねぇ、六花の薬代はいくらなの?」
「貴女はまだ彼を助けることを夢見ていたのですか。諦めなさい。あれは貴女には治せません」





お金ではなく必要なものを薬売りが手に出来ないから、と説明されたけど、理解が出来ない。
何よそれ、意味わからない。
だったら何故あたしを森から連れ出したの。






「貴女には1人でも生きていける力が必要です。六花くんがいなくなったらどうやって生きていくおつもりですか」





もし愛想をつかされて離れられたら?
何も病気だけが離れる理由にはならないのだと改めて気付く。





料理や洗濯、家事全般はあたしが担当していたからきっと出来る。
けれど働くことは?
それだけは今まで六花がやってくれていたのだ、あたしには未知の世界だった。





1人になった時のことなんて確かに考えていなかった。
けれどそれは1人になることを想像出来なかったからで、彼は愛想をつかしたとしても行く宛のないあたしを追い出したりはしないと解っていたから。





森から出さない、なんてルールを作るくらいだから、きっと守ってくれるものだとタカをくくっていたのだ。