「はい、もしもし…」

受話器を手に取ると、
「副社長、大丈夫でしたか?

おとといから風邪をひいていたのに、ご無理をなさるから!」

電話越しから聞こえた年配の男の人の声に、あたしは訳がわからなかった。

副社長って、誰と間違えているんだ?

そう思いながら、
「あのー、間違いだと思うのですが…?」

あたしは声をかけた。

「えっ…小泉修哉さんの自宅の電話番号であっていますよね?」

男の人は訳がわからないと言うように聞き返した。

「そ、そうですけど、あの…」

そう声をかけたら、
「あっ、ごめんなさい!

最後のところが間違ってました!

小泉さん違いでした、失礼しました!」

男の人は慌てて謝った後、すぐに電話を切った。