1階に住んでいる大家さんに声をかけても、
「小泉修哉さん?

さあ、そんな人は住んでいなかったねえ」

同じ反応が返ってきた。

「そんな…もっとよく思い出してくださいよ!

20代の若い男性で…」

「若い人ならたくさん住んでいるけどねえ。

でも、小泉さんなんて言う人は知らないねえ。

それにあの部屋は、2年前から誰も住んでいないんだ」

「そ、そうですか…。

ありがとうございました…」

あたしはお礼を言うと、その場を後にした。

出て行ったあたしの足取りは重かった。