「……そっかあ。じゃあ、仕方がないなあ」
ととと、と真大に背中を向けて走り出す。
風が頬にあたって気持ちいい。もうすぐ夏。わたしの春と同じくらいに、地球の春も終わってしまった。あっけないものだ。
いいんだ、恋って、そんなものだから。
「別れてあげるよ」
真大とは距離がある、と言ってもせいぜい二、三メートル。人通りが少ないこの道では、つぶやいたって今の言葉は聞こえているだろう。
真大はゆっくりと、わたしに近づく。
わたしはそんな真大を、ゆっくりと待った。
また、二人の視線が絡まったところで、真大が言う前に、わたしは口をはさんでいった。
「じゃあね、真大。楽しかったよ」
「じゃあ。お前も早く、いい人見つけろよ」
なんてひどい言葉を言うんだろう、と思う。
いい人、なんて。今のわたしにとって最高に最強にいちばん素敵な人が、おまえだってこと、真大はわかっていないみたいだ。
残酷でひどくて、けど、やさしい人。
だから好きになったんだ。
微笑みを交わして、二人、背を向けて別々の道を歩き出す。
もともと真大の家を通って駅まで向かうのは、わたし的に遠回りなのだ。だから、これからは、電車の時間をそんなに気にしなくて済む。
真大の家を通り過ぎてから走ることもなくなったんだし、いいじゃん、ラッキーわたし。これからは時計忘れたってへっちゃらだ。
