失恋記念日




黙って隣を歩いている真大の考えが、今まではわかっていたつもりでいたのに、今はまったくわからない。

何を考えているんだろう。

何を思っているんだろう。

誰を想っているんだろう。

もう、なんにもわからない。わかりたく、なかった。

けれど、ひとつだけはっきりさせてくれたことがある。


彼はもう、わたしを想っているわけではない。



「ごめん、自分勝手で」



やっと重い口を開いた真大から出てきた言葉は、うっかりするとわたしにブーメランで帰ってきてしまいそうな言葉だった。


ほんとに、ほんとにそうだよ。なんでわたしに何も言わないで勝手に決めちゃうんだろう。何か言ってくれたら、わたしだってできることがあったかもしれないのに。

真大はわたしに何のチャンスも与えず、ただ、うなずくことしかできなくなるような言い方をする。


そんな重い口調で、まっすぐな瞳で言われると、嫌だ、なんて言えなくなるじゃん。



「……ううん。自分勝手なのは、わたしのほうだよ」



なんて、そんなことは一ミリたりとも思っていないのだけれど。

わたしは自分勝手というか、狡い女だ。

狡くて、賢くて、計算高くて、意地悪で、性悪で、弱い女だ。

だから全部、知らないふりをして真大の隣にいつづけた。

きっと、真大もわかっている。わたしがこんな女だって。わかってて、今まで我慢してくれていた。