ほしくて、いらない。



目を覚ますと自分の部屋とは違う天井。



隣に感じる温もりを無視して、ベッドを下りた。



わりと良かった。



リピートもありかな、なんて思って電話番号をメモしたが、くしゃりと丸めてポケットに乱雑に突っ込んだ。



やっぱりやーめた。



顔を洗って着替えた後、部屋を出た。



髪をひとつにまとめながらエレベーターを待つ。



すぐに扉は開いた。



が、



「……………」



せっかく手でまとめた髪の毛たちは、次から次へとサラサラこぼれていく。



気まずい。



昨日の診察に行かなかったこと、場所がラブホだということ。



非常にまずいです。



「乗らないなら閉めるわよ?」



男の体に寄り添っていた女性が高い声で言った。



「…すみません。行ってください」



いや、無理でしょう。



乗れるわけないでしょう。



無理無理無理無理絶対無理。



お願いします、何も触れずにさっさと行ってください。