ほしくて、いらない。




「ねぇ桜ちゃん超可愛いね」



「そんなことないですよ〜〜女の子にはメイクという魔法があるんですから」



「えーじゃあ桜ちゃんのこの美しさもアートってこと?」



「アートって…うまいですね〜〜!」



「ねぇ連絡…「お手洗い行って来ますね」



「あ、未来も!」



未来ちゃんと一緒にトイレに向かった。



「桜ちゃんってわりとやり手なんだね」



用を済ませ、二人並んで手を洗っていると鏡越しに未来ちゃんと目が合った。



「はい?」



「未来ね、周りに関心なくて、冷たくて、大人しい、一人でいいです。みたいな、そんなイメージを桜ちゃんに持ってたの」



「………」



「プリコーナーで美咲が言ったこと、未来勘違いしてたみたい。桜ちゃんは、その場の雰囲気とかお話とか純粋に友達と遊ぶような感覚を楽しみたいんだと思ってたんだけど、ここに来てガラッと桜ちゃんのイメージ変わっちゃった」



「…………」



「美咲が言った、ただ適当に楽しみたいんでしょ?って桜ちゃん否定しなかったよね。あれ、そういうことだったんだね」



「…………」



「大丈夫、安心して。誰にも言わないから。こんなことバラしちゃったら、みんなの桜ちゃんのイメージ壊しちゃうもんね。汚れがなくて美しい、男に染まらない高嶺の花」



「でもね、親近感わいた。未来今まで、大人しそうにしてる桜ちゃんが気に入らなかったんだ。顔いいくせに性格大人しいとか、それは男寄ってくる。ずるすぎ。周りにはいつも人が集まってるくせに、一人で平気ですって感じの桜ちゃんがかっこよくて、羨ましかったのかも。けど桜ちゃんの黒いとこみ〜〜っけ!これからもよろしくね!」


歪んでる。


そう思った。


だけど言えない、私も歪んでるから。


未来ちゃんのあの敵意はそういうことか。



未来ちゃんは言うだけ言って戻って行った。