「いえ、忘れ物を取りに来ただけなので」
「挨拶、して行かなくていいの?顔見せてあげなよ〜」
「いいんです。高沢先生に会いに来たわけじゃないので」
「でもさっき探してたでしょ?」
さっき、
違う。あたりを見回したのは、高沢先生を探していたわけじゃない。
「なに言ってるんですかー。違いますよ」
私は笑って返した。
「素直じゃないんだから」
素直じゃないって…確かに私は素直じゃないけど、石田さんの言ってることだと、私は本当は高沢先生に会いたいと思ってるんだ、って…そういうこと?
違う。
絶対違う。
「じゃあまた」
そう言って今度こそ切り上げた。
石田さんの言ったことは忘れよう。
それがいい。そうしよう。
石田さんの勘違いなんだから。
深く考える必要はない。
