「じゃあな」
そう言って扉を開けた先生だけど、もう一度振り返って口を開いた。
「人ってな、必ず自分以外の誰かの力を借りて生きてんだよ。一人じゃ生きらんねぇよ。俺みたいに、一回落ちてるやつなんて尚更な。後になって、支えてくれたたくさんの人にバカみたいに感謝する日がくるよ。
みんな支え合って生きてる。支えてくれてる人がなかなか思い浮かばなくても、少し視野を広げて見れば必ずいるから。
お前、俺と似てる気がする」
そう言って出て行った。
言われて気付いた。
どうして先生はこんな話を私にしたのか。
…人に頼ることを教えてくれたんだ。
私だけが悲しい過去を抱えているわけじゃないって、教えてくれたんだ。
周りには同じような人もいるって、
そうすることで頼りやすくなるように。
私は部屋を飛び出して先生を追いかける。