ほしくて、いらない。




「それでも、知らされてなかったとしても、気づくことはできたはずだ。

俺が最後に病院で見た母親は、痩せこけていた。
ついこの間見たはずなのに、こんなに変わっていたことに気付くことができずにいたんだ。

俺が最後に母親の顔を見たのっていつだっけ…って、思い出そうとしても思い出せないくらい、俺は母親を無視していたんだ。

たった一人の母親だったのに」



こんなに大切で重い話をしてるっていうのに、先生から悲しんでいる様子はない。


先生はいつもの馬鹿話をするように、普通に話している。



先生、悲しくないの?



我慢してるの?



それとも本当に何とも思ってないの?



もう過去のこととしてしっかり乗り越えてるから?



乗り越えることができたの?



お母さんを失った事実を、先生は乗り越えることができたの?



私には無理…



家族がバラバラになったことを、もう過去のことなんだ、って乗り越えることなんてできない。