ほしくて、いらない。




お父さんが、私の5歳の誕生日を祝ってくれることはなかった。



ううん、5歳の誕生日だけじゃない。



6歳の誕生日も…



7歳の誕生日も…



8歳も9歳も10歳も。



あれからずっと、今もずっと。



お父さんは、私があまりにも泣きわめくようだから無理に帰ってこようとしてくれたらしい。



先輩に頭を下げて、仕事を切り上げて、
急いで帰ってきてくれようとした。



お父さんの運転していた車は、急ぐお父さんの気持ちと共にどんどん加速していたらしい。



そんなお父さんの車は、大きな十字路で大きなトラックにぶつかってしまった。



白い部屋で

白いベッドで

白い布に包まれて眠っているお父さんの横で、



お母さんはお父さんの手を握りながら声をあげて泣いていた。



あんなに心を乱しているお母さんを見たのは、あの夜が初めてだった。



私のお母さんは落ち着いた人だったため、あまり感情を露わにしなかった。



いつもにこやかに笑っていて、優しくて、ふわふわした人だった。



怒ったお母さんは怖かったけれど、それは私のためだったって今ならわかる。



そんなお母さんの肩を抱いて泣くのを我慢していたのは、おばあちゃん。



おばあちゃんの下唇は青くなっていた。



おじいちゃんは私を抱っこしてくれていた。