ほしくて、いらない。



「美咲、ごめん帰る」


「ちょっと桜!」



正直、未来ちゃんと私は合わないのかもしれない。


ていうか…私と気が合う人なんているんだろうか。


美咲でさえ、もしかしたら私の性格を知っていて合わせてくれてるのかもしれないじゃん。


未来ちゃんは、私にとって面倒だ。




「はぁー…全然気分転換にならなかった」



気分転換するつもりで病院を抜け出すのに、


今日は気分を害してのお帰りだ。



「桜ちゃーん、またぁ〜?」



病院に戻ると、廊下で石田さんに会ってしまった。



「すみませんー」



「もー…何度目のすみませんよ。全然気持ち入ってないんだから〜!謝れば済むみたいな感じあるでしょ。また明日先生に怒られても知らないからね!」


「石田さん、おやすみなさい」


「おやすみー…ってまだ3時じゃないの!」



石田さんの呆れた笑い声が後ろで聞こえる。


石田さんは怒っていても笑っているから、あまり怖くない。



「桜ちゃん!久しぶりにピアノ弾かない?広場でみんな集まってるのよ」



病室に入る前、今度は違う看護師さんに声をかけられた。




「今日はいいです。やめときます」


「そう、残念。また今度聞かせてね!」


「はい、気が向いたら」


「ふふっ、正直ね」



そう言って看護師さんは行ってしまった。