ほしくて、いらない。



色々と考えていると、目の前に黒い車が停まった。


先生らしくてかっこいい黒の車。



「乗れ。前」


「はい」



ドアに触れた指先が、
少し震えていることに気がついた。



柄にもなく緊張しているんだ、私。


ああ、ださいな…。



「お願いします…」


「ん。家どこ?」



「あ、駅でいいです」


「家どこ?」



これは家まで送るということだろうか。



だけど駅から私の家まで徒歩5分と近い距離。


家までの道案内が面倒なため、駅までで十分なのに。



「…あの、駅から家まで近いので」



「あ?家どこっつってんだよ。早くナビ打ち込め」



「…はい」



先生の少し荒れた口調に、従わないわけにはいかなかった。



「お前ん家ここ?」



私が打ち込んだ文字を見て先生が反応した。



「そうですけど…なにか?」


「や、何でもねぇ」



先生はそう言うと、それ以上なにも言わずに車を走らせた。