泣き疲れたのか、眠ってしまったクソガキ。


あのあと、


雨で濡れたこいつにシャワーをさせ、俺のジャージを貸し、ホットミルクを飲ませて俺もシャワーを浴びて戻ると、こいつはそのままソファで寝ていた。


そして今に至る。


俺はこいつの横で資料をまとめている。



なんでお前は呑気に寝てんだよ…なんて意外に思っていない自分に少し驚いている。



冷たいと周りに言われまくっているこの俺が、こいつに毛布をかけてやった。


面倒をみてやった。


俺は案外周りが思っているほど冷酷な男じゃないのかもしれない。


…なんて。




雨にうたれているあいつに声をかける前、


昼なのか夕方なのかわからない時間帯だった。


入院患者の相手を終え、病室を出ると、女の叫び声が聞こえてきた。


その声を追って近づくにつれ、


その声が叫び声なんてものではなく、怒鳴り声だったということに気づく。


そして声を辿ってついたところで、こいつともうひとりのガキが揉めていた。


痴話喧嘩か、ってそのときは放置してその場を去った俺。


次にまたそこを通って、こいつを見つけたのは偶然。


雨が降っていた中、地面に座って俯いていたこいつの背中が、


あのときは、


やけに小さく見えた気がした。