パシャッと音を立てて湯船の中で顔を濡らすと、ジワリと目元が痛む。

「泣きすぎだよね」

浴室では自分の声がよく響く。


誰もいない放課後の廊下で、笹沼くんは私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。


甘えて胸を借りちゃっていたけれど、落ち着き涙も止まるとただ恥ずかしかった。

でも笹沼くんはなにも言うことなく、「帰ろう」と一言だけ。

お互いなにも話すことなく一緒に帰路に着いたんだ。


気づけば長い時間泣いていたようで、部活動の終了時間まで学校にいた。


帰宅すると当然親に「遅かったわね」と心配され、泣き顔を見られたくなくて「先にお風呂入ってくる」と言い、浴室に逃げ込んだ。


「少しは腫れ引いたかな?」

浴室の湯気で曇っている鏡を拭き自分の顔を映し出す。

まだまだ目元は赤いけれど、少しはマシになったはず。

それにたくさん泣いちゃったけど、その分心は軽い。

ため込むことなく泣けたからだと思う。