大きな手が後頭部に触れ、さらに抱き寄せられた。

「だから泣いていいよ」

「……っ」


なにそれ、泣いていいよって。

せっかく涙を止めたのに。なのにどうしてまた泣かせるようなことをするのかな?


感じるぬくもりも頭や背中を撫でる手も声もすべてが優しくて心地よくて、嫌でも涙が込み上げてきてしまう。


瞼を閉じると暗闇に浮かぶのは、柳瀬の笑顔だった――。


ずっと好きだった。

名前も顔を知らない倒れた私を、迷うことなく助けちゃう柳瀬のことが。


いつも明るくて誰に対しても優しい柳瀬のことが大好きだった。


何度も想いを伝えようとして躊躇って。

柳瀬のそばにいたくてたまらなくて……。


考えれば考えるほど、胸が苦しくなるばかり。

「ごめっ……ちょっとだけ」


どうやっても涙を止める術などなく、笹沼くんの優しさに甘えて胸を貸してもらった。