「じゃあ俺も皆森さんみたいに、後悔しないようにするよ」

「……それって……」


言い掛けた言葉を遮るようにニッコリ微笑む笹沼くん。

普段はあまり笑わない人の笑顔に、不覚にも胸がキュンと鳴ってしまった。


「戻ろうか」

私の胸キュン事情など知る由もない笹沼くんは先に歩き出した。

「……うん」

どうにか返事をし、カレの一歩後ろでついていく。


びっくりした。

笹沼くんってば突然笑うから――。


今も胸の鼓動は速いまま。

少し離れて歩いていないと、ドキドキしていることがバレてしまいそうで怖い。


でもさっきの言葉。

後悔しないようにするってことは、笹沼くん……光莉に告白するつもりなのかな?

そう思うとキュッと胸が締めつけられる。


光莉の気持ちは日を追うごとに大きくなっているはず。

そんな光莉の気持ちを知っているからこそ、胸が痛む。


笹沼くんに後悔なんてして欲しくない。

でも気持ちが分かるからこそ、傷ついてほしくもない。


矛盾する気持ちを抱えたまま、ふたりで教室へと戻っていった。