笹沼くんの話を聞くべきなのかもしれない。

けれど感情は昂ぶるばかりで、口が止まらなかった。


「私はこれから光莉のことも柳瀬のことも全力で応援するよ! どちらかが告白するって言ったら協力する!」


もう決めたんだ。

私は全力で応援するって。

光莉の気持ちを聞いたあの日に決心したんだ。


「本当にそれでいいの? 皆森さんこそ後悔しない?」

それなのに笹沼くんは決心を揺るがすようなことを聞いてきた。

まるで自分自身に問い掛けているようにも見える。


「後悔しない! ……って胸を張っては言えないけど、これからは後悔しないようにしたいって思うよ。もう大好きな人に嘘なんて、二度とつきたくないから」


自分の思いを伝えると、笹沼くんは目を伏せた。

「そっか……。分かった」

「え?」

そう言うと階段を上り始めた笹沼くん。

意味が分からないまま後を追い掛ける。

そしてドアを開けて廊下に入ると足を止め振り返った。