お互い見つめ合ったまま言葉を発することができない。

やっぱり笹沼くんは後悔しているんじゃないかな? 光莉に好きって伝えなかったことに。


ひとつ目の駅に到着し、反対側のドアが開き人が乗り降りしていく。

大人数が降りていき、席は空いたのに私たちは立ったまま。

ドアが閉じまた電車は発車していく。


どれくらいの時間お互い無言で見つめ合っていただろうか。

次第に時間が経つたびに、悪いことをしている気持ちになっていく。


人には誰だって話したくないことがあるはず。

それを私は笹沼くんに答えさせようとしているのかもしれないと。

徐々に笹沼くんの顔が見ていられなくなり、視線を落とした瞬間「ごめん」と呟いた。


「いや、俺の方こそごめん」

すぐに笹沼くんも謝ってくれたけど、それが返って私をまた混乱させていった。


笹沼くんの“ごめん”の意味はなに?

やっぱり後悔しているのかな? それを話せなくてごめんって意味?

けれどもうこれ以上詮索することなんて出来なかった。


あっという間に笹沼くんが降りる駅に到着し、カレは「また明日」と言って帰っていった。

手を振り見送るものの、やがて電車が発車し見えなくなると笑顔も消え去っていく。