「芹沢…鴨」



その名前を口に出す。


さっき感じた居心地の良さはここにいても感じないわけじゃない。



けど、彼の静かに高ぶっている感情が何かを連想させた。



私は彼を嫌いになれない。

何故かそう思った。





「あの人は1回言ったら覆すことをしない。

仕方ねぇが、お前は俺の小姓ってことになる」



瞼を伏せてそう言った土方歳三に、コクンと頷く。



「結局希望に添えず、悪いな」



悪いことをしていない彼が私に頭を下げた。


それだけ責任感が強い人なんだろう。




芹沢鴨という不機嫌な男は、私の中に眠っていたものを呼び覚ます。



そんな予感がした。